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―ダイエットと栄養― 人間の体は,脂肪の部分と脂肪以外の部分に分かれます. この脂肪以外の部分の重さを除脂肪体重(LBM:Lean Body Mass)といいます.これは筋肉や骨,内臓など人間の根幹部分の重さともいうべき,とても大切な部分の重さということになります. 人間の一生の中で,この除脂肪体重の部分の変化を見ると,通常生まれてから20歳代にかけては急激に増加し,20歳代のピークを越えると緩やかに減少してゆきます. この変化をグラフ化するとちょうど運動能力曲線と同じような変化であることがわかります.そして除脂肪体重のピーク値を100%としてその減少と病気の発生の関係を調べた人がいます.その人の論文によると, *15%低下すると−細胞性免疫機能が低下する *20%低下すると−気管支肺炎を起こしやすくなる *30%低下すると−衰弱し,歩けなくなる *35%低下すると−尿路感染症を起こしやすくなる *40%低下すると−寝たきりになる *45%低下すると−褥瘡ができる *50%低下すると−死亡する この除脂肪体重は,老化によっても少しづつ低下しますが,急激な栄養不良状態でも低下してしまいます.よく急激なダイエットして,体調を崩し悪くすると死んでしまったなんて話を聞くことがあります.これは食べなことにより急激に栄養状態が悪化し,除脂肪体重が急激に減ることが大な原因です.ダイエットの基本は除脂肪体重を減少させずに余分な脂肪部分を減らすことです.体の脂肪を燃焼させる有酸素運動をすることが一番いいようですね. ―血清アルブミン値との関係― 体の栄養状態を表す指標としては,「血清アルブミン値」というものがあります.普通の健康成人は4.0以上,少なくとも3.5以上あります.この値が3.5より低下すると,痴呆が進行したり,転ぶようになったり,失禁をするようになって,「寝たきり」になるリスクが増大するということがわかっています. さらには2年後の死亡率が約2倍になり,鬱状態になりやすくなり,日常生活の活動力が低下するようになるそうです.一つの健康の指標として,この血清アルブミン値に注目することはとても大切ですね. この血清アルブミン値の恐ろしいところは,健康そうに見えても知らないうちに下がっていることがあるということです.このような人は,健康を保つための「余力」が少ないのだけれど,今は健康という人です. ですから血清アルブミン値が低い人が風邪をひいたりすると,高い人に比べてなかなか治らない,悪くすると悪化して入院してしまうなんて可能性もあります. 何かの機会に血液検査をするようなことがあれば,お医者さんに相談して,自分の栄養状態のパラメータとして数値をしっかりと確認してみるというのもいいと思います. ―食べることと味覚― 最近は健康ブームで減塩食,肉は悪者扱いです.でも本当にそうなんでしょうか? 栄養学的にいえば,過度の減塩食を食べていることにより体の塩分が少なくなると,体の血液量が低下して,身体活動力が低下することが知られています.もっともっと行き過ぎれば,寝たきり一直線ということかもしれません.またお肉などの動物性タンパクを食べている人の方が,食べていない人に比べて,先ほど説明した血清アルブミン値が高く,生命予後がよい(長生きする)というデータもあります.病気などで食事の制限をうけている人は別ですが,健康を保つためには必要なものを必要なだけ食べることが大切です. 毎年厚生労働省が「日本人の栄養の現状」を出しています.栄養士さんなどに指導を受けたりして,どのようなものをどれくらい食べたらいいのか,また,どのように食べたらいいのかなどをキチンと確認した方がいいです.行きつけのお医者さんに相談すれば栄養指導をしてくれると思います. 減塩食ブームとともに,薄味ブームでもあるようです.また,高齢になると味覚が低下する(特に甘み)という報告もあります.味覚が低下しているところに,薄味の食事というのは,食欲を奪うばかりではなく,栄養状態も悪化させていることにつながりかねません.特に介護が必要となった 高齢者にとっては大変重要な問題です. お医者さんや歯医者さん,看護師さん,栄養士さんなどに相談しながら,正しい介護食の知識を持つことが大切です. ―免疫力と食べること― 食べて免疫力を向上させる?なんて聞くと薬草とか美味しくないものを食べるのかしらと,思ってしまうかもしれませんね.実はそうではないんです.普通のものを食 べるということが,免疫力をアップさせるんです. 焼き肉でホルモンを食べたことがありますか?あのホルモンは片方の面がヒダヒダ していると思います.普通のものを普通に食べているラットの小腸の内面には,長い ヒダヒダ(小腸絨毛)がたくさんあります.ところが食べるものの大きさが小さくなったり,柔らかくなったりすればするほど,このヒダヒダの高さも低くなりツルン とした状態になるということが1990年頃から発表されています. 人間も同じようなことが起こるようです.実はこのヒダヒダが長くてたくさんあるということは,すなわち免疫力があるということなのです.成人の体の最大の免疫臓器は「腸管」であり,この腸管の免疫力は 「食べる」ということで大きな力を発揮するのです. 大きな病気をして口から食べられない状態となり,ずっと点滴で栄養管理をしていると感染症にかかりやすくなり発熱したりして抗生物質の点滴を追加するということが行われます.これは口から食べられないことにより小腸絨毛が萎縮し,免疫力が低下したことが主原因で起こります.このようなことがわかってから,先進的な病院ですと,点滴による栄養管理が長くなる患者さんにはGFO療法といい,グルタミンと食物繊維,オリゴ糖を混ぜた溶液を使って小腸絨毛の萎縮を防止して免疫力を下げないようにするというような治療を行なわれるようになりました. さらに2000年代になってから,アルギニン,ω-3系脂肪酸,核酸,グルタミンを用いた免疫賦活栄養法というものが医学会で考えられ始めたのです. 口から食べる→腸管を使う→免疫力アップ案外と知られていない,とても大切な関係です. ―食べることと唾液― 口の中の唾液が出なくなると......どうなると思いますか?ちょっと運動をして口が渇いた状態,「早く水を飲みたい」という感じがずっと続きます.しゃべろうとしても舌が上あごやほっぺたにペタペタくっつく感じでしゃべりづらく,入れ歯を入れると歯ぐきに傷が付きやすく痛くて食べられない.なんてことになるでしょう. シェーグレン症候群の患者さんの話を聞いていると,あまりに辛そうで,何とかしてあげたいと思いますが.....僕との話の間にも,ポケットに入れたペットボトルの水を2回飲んでいました. しかし,口腔乾燥はこのような病気だけが原因となるのではなく,高齢になると徐々にこのような症状が出てくる人も多いようです.あまりに乾くから,のど飴をなめていると少しいいので,四六時中なめて乾きを癒していましたという患者さんは,もともと8020(80歳で20本の歯を残そうという運動)達成で義歯も必要なくとても綺麗な歯の女性でした.ところが,のど飴をなめ続けたせいか下の前歯の根本が全部虫歯になってしまいました.また,ある患者さんは口が乾くからと水を頻繁に大量に飲んでいたため,心臓の負担が大きくなり入院してしまいました.口腔乾燥は軽い病気と見 られがちですが,症状は辛く,悪くするとかなり深刻な状態となってしまう病気なのです. こんなに大変な口腔乾燥は,やはりなる前に「予防」することが大切です.唾液を分泌する組織は,大量に唾液を分泌する大唾液腺として,ほっぺたと耳の間くらいに耳下腺(おたふく風邪で腫れる)があり,さらにあごの下に顎下腺と舌下腺があります.また口の中アチコチに小唾液腺という組織があります.要はこれらの唾液腺からの唾液分泌量が減らなければいいのです. まず第一の予防法は「よく咬んで食べて,唾液を日頃から十分に出す」ということです.高齢になればなるほど,使わない組織の機能はどんどん低下していきます(廃用性機能低下).十分に口を使い,唾液をいつも出しているということが大切です.さらには「口の中を常に綺麗にして唾液を分泌しやすい環境を作る」「指で唾液腺をマッサージする」ということが効果的なようです.「食べる,しゃべる,笑う」と,口を健康的にどんどんと使うことはお口と体の健康につながり,とても介護予防に効果的であると思います. |
